ラコタハウス丸の内店オープン記念モデルは2種類
ラコタハウス丸の内店限定 オールデンシガーモックトゥ
ラコタハウス丸の内店限定 オールデンウイスキープレーントゥ
2018年11月8日に満を持してオープンしたラコタハウス丸の内店。
その限定商品として貴重なコードバンを使った2種類のオールデンが登場した。丸の内二重橋スクエアの前に良い身なりをした男性陣が徹夜で並んでいる姿を通勤時に目にした丸の内勤務の方も多かったであろう。
それなりの年齢でそれなりの社会的立場もあるであろう男性陣をこれほどまでに夢中にさせるこの2つの限定商品の魅力はどこにあるのか。徹底的にレビューをしてみたい。
1. レアカラー x モディファイドラストが極めて貴重
まず今回登場したコードバンはレアカラーと呼ばれるウイスキーコードバン、シガーコードバンを使ったものだ。
ウイスキーコードバンはオールデンが使っているホーウィン製のコードバン中でも一番色目が薄く明るいコードバンであり、コードバンの頂点に位置するものである。
シガーコードバンはレアカラーの中でもビジネスシーンに使いやすい、美しくまるでチョコレートのような深い茶色の色目をしたコードバンであり、そのエイジングの美しさには高い定評がある。
通常、オールデンは黒かバーガンディ(カラー8)と呼ばれるコードバンで作られているが、今回はラコタハウス丸の内店のオープン記念モデルということもあり、ウイスキーコードバンとシガーコードバンというレアカラーが使用された。
レアカラーというだけでも極めて貴重な上、今回はモディファイドラストと呼ばれる原則日本もしくはフランスのみでしか使用できないラストが用いられた。ウイスキーやシガーコードバンなどのレアカラーのコードバンをモディファイドラストで創ること自体が天文学的な確率であり、丸の内店でリリースされた2足は両方とも極めて貴重なモデルということになる。
かの有名なアメリカのショップAlden of Carmelでさえもモディファイドラストのレアカラーは創ることができないことから、今回の限定商品の貴重さが良くわかるであろう。
2. オールデンの極み ウイスキープレーン
オールデンが使うホーウィンのコードバンの中でも一番色味が明るいウイスキーコードバンを何の手を加えることもなく創りあげたプレーントゥはオールデンの極み。
アメリカのショップではウイスキーのプレーントゥなどは定期的に創られているものの、基本的には9905と呼ばれるバリーラストのウイスキープレーン。私もサンフランシスコのオールデンショップから9905は定期的にオファーを受けることもあり、バリーラストのウイスキープレーンは貴重ではありつつも、世界の総数でいえば決して少なくはない。
しかしながら、それをモディファイドラストで創りあげたとなれば話は全く変わってくる。美しくウエストがシェイプされたウイスキーコードバンはまるで全く別の靴に見える。このウイスキーを熟成させた状態を想像しながらシングルモルトウイスキーを傾ける瞬間は格別に違いない。
3. 上質なビジネスシーンを演出する シガーモックトゥ
実は私が真に貴重であると考えるのはシガーコードバンで創られたモックトゥの方だ。
モックトゥはプレーントゥにも使える極めて品質の高いコードバンをオールデンのファクトリーの熟練職人が一つひとつ手作業で縫い目をつけて完成する。
価格を見ても今回のウイスキープレーントゥは134,000円、シガーモックトゥは138,000円であることからしてみてもシガーモックトゥの方が高いコストがかかっていることがわかる。
更に特筆すべきは、今回のこのシガーコードバンは品質が極めて高い。シガーコードバンにはオリーブ系のシガーとブラウン系のシガーがあるが、今回は極めて貴重で美しいオリーブ系のシガーコードバンが使用されているのだ。
加えて、ラコタハウスが丸の内店の目玉としてこの商品をリリースしたことが良くわかる仕様がある。そう、エッジとソールだ。写真をよく見ていただきたい。
シガーコードバンは通常、相性の良いアンティークエッジと呼ばれる明るい色のエッジを使うことが多い。しかしながら今回ラコタハウスが選んだのは極めて黒に近いダークな色合いをしたマホガニーエッジである。更にソールはオールデンでよく使われるダブルソールではなく、シングルソールであり極めてスタイリッシュなオールデンに仕上げている。
これは丸の内という立地を鑑みオールデンをビジネスシーンに浸透させるための極めて重要な仕様だったに違いない。私はレアカラーをビジネスシーンに使用することはほとんどないが、オリーブ系のシガーコードバン、ダークマホガニーエッジ、シングルソールを用いたこの美しくそして誠実なオールデンはビジネスにもぜひ使いたいと思う。
上質なビジネスシーンを演出するために本当に素晴らしいオールデンが登場したのだ。
ラコタハウス丸の内限定商品はどちらを買うべきだったのか
最後に究極の選択だ。
ラコタハウス丸の内店オープン記念でリリースされたこの2つのオールデンは、いくら徹夜で並ぼうとも一つだけしか買えない。
果たしてどちらを買うべきだったのか。
もし当日私が整理券番号1番を手にしていたらウイスキープレーントゥを選ぶと思う。あの素晴らしい天気の中、美しいショップ店内で、眩く輝くウイスキーコードバンを見たら、オールデンの極みであるウイスキープレーンを手にしたら、それを選ばずには居られない。
しかし、余りにも美しく貴重すぎて、更には合わせるコーディネートに窮し、きっと永い間履くことはないだろう。そして一生履かないまま時が過ぎ去り「おじいちゃん、変な靴を集めるのが好きだったのよね」と孫に廃品回収に出されてしまうかもしれない。
一方でシガーモックトゥの方はどうか。当日ウイスキープレーンと比べてみたら華やかなウイスキープレーントゥの溢れる魅力に誰しもがウイスキーを選び、シガーは選ばれなかったかもしれない。当日ウイスキーの方が先に完売したのも充分に頷ける。
しかしながら、数日が経ち、冷静に物事を捉えれば、正解はシガーモックトゥの方だったかもしれない。
ラコタハウス丸の内店がビジネスにオールデンを浸透させる橋頭保だったとすれば。ビジネスシーンに美しく磨き上げたオールデンを履き、美しく仕立てたスーツに合わせ、丸の内を闊歩するならば。選択肢は一つしかない。
そんな美しくも悲しい物語。
だからこそオールデンの物語はこれからも続くのである。
2018.11.11 Alden Style