BMWを161万円引きで買う方法
BMWを買った時の話をしたい。
結論から伝えるとBMWを161万円引きで手に入れた。
僕は良いものをリーズナブルに手にすることが好きだ。
そして手に入りにくいものをあらゆる手段を尽くして手に入れることが大好きだ。
特に人との交渉、タイミング、情報などに左右される不確定要素が入り、実力によって結果が異なる場合、そのゲームは最高に面白くなる。
BMW値引き交渉ゲーム
今回、僕が挑戦したゲームはBMWをいかに安く買うかだ。
車両価格544万円のBMW 320i Gran Turismo Luxuryを161万円引き、つまり383万円で買った。僕の実際の注文書がこれだ。
実際にどのような方法で161万円引きを勝ち取ったのか。営業マンとの詳細なやりとりも含めてBMWを値引きする方法を徹底的に公開したい。
BMWを値引きする3つの方法
- BMW Japan or BMW Tokyo の決算月に購入する
- BMW 特選車を選択する
- 一番優秀な営業マンを指名する
一見当たり前のように見えるが、ゲームに必要な基本ルールはここに全て揃っている。さあ、それでは具体的に見ていこう。
1.BMW Japan or BMW Tokyo の決算月に購入する
BMWにはBMW JapanとBMW Tokyoがある。
BMW Japanはいわゆるメーカーであり、BMW Tokyoがディーラーだ。
それぞれ決算月が異なり、BMW Japanは12月、BMW Tokyoは3月であるため、12月もしくは3月に車を登録する必要がある。
ではなぜ決算月が有利なのか。メーカーにとっては売上、販売台数などの業績が株価に直結することに加え、ディーラーにとってはメーカーからのインセンティブが販売台数によって決まるからだ。
決算期のインセンティブ次第では一円でも売った方が良いというBMW側の理論
例えば、あるディーラーが決算月の前までに99台の車を売っていたとしよう。100台売れば1000万円のボーナス、インセンティブがもらえる設定になっていたとしたら、最後の1台は赤字であっっても売った方が良い。極端な話、登録さえしてもらえれば販売価格なんて一円でも良いのだ。
僕は値引きが大きく見込めるメーカーの決算月、BMW Japanの12月にターゲットを絞った。本国ドイツBMWの決算月も12月であることから、BMW Japanへのプレッシャーは相当なものだろう。
交渉に1ヶ月程度かかると見込み11月下旬に最初の訪問をした。
2. BMW 特選車を選択する
次に把握しておかなければならないのは特選車という車の存在だ。BMWには特選車という車が存在する。通常BMWは発注を行ってから本国ドイツはミュンヘンで3-4ヶ月かけて作られる。もちろん受注生産型の場合はヘッドアップディスプレイや自動ブレーキなどオプションも好きなようにつけられる。
写真は僕が実際にミュンヘンのBMW本社へ行ったときのものだ。受注生産の場合、ドイツのBMW本社で納車することもできる。本社ビルの中にあるラインをゆっくりと自分で運転して帰宅するのはBMWファンの夢だ。
一方で特選車とはBMW Japanが事前に売れ筋の車種を自ら事前購入しているものだ。本国ドイツからの販売プレッシャーもあり、Japan自らが購入し倉庫に厳重に保管されている。
いわゆる在庫品というわけだ。
特選車は一刻も早く売り切りたいというBMW側の理論
在庫品といっても、ディーラーに展示されている展示車でも試乗車でもない。もちろん登録もされていない完全な新車だ。すでに日本に納入されていることから、納車も早い。そしてメーカーとしては在庫管理のコストもかかり、売れ残ると価値が下がってきてしまうことから一刻も早く売り切りたいという事情がある。その心理を狙い撃ちするのである。
交渉が上手な人なら100万円程度の値引きは楽に引き出せるだろう。
メリットは素敵なオプションが思わずついてくることがある点、そして前述の通り納車が早い点だ。
正直デメリットはほどんどない。本国でつけるオプションがつけられないことくらいか。
特選車は営業マンがリストを持っている。
3. 一番優秀な営業マンを指名する
僕は大きな買い物をするときには一番最初に「絶対に買うから一番優秀な営業マンをつけてくれ」と言う。大切な人生の時間を使ってゲームを楽しみに来ているのに、交渉相手が力不足なんてことがあれば興ざめだ。
一番優秀な営業マンであれば必ず大きな裁量を持っている。そして一番優秀な営業マンの裁量権を超えたところに一部の勇者だけがたどり着くことのできる秘密の楽園があるのだ。
では、その楽園にたどり着くためにはどうするか?
ゲームは時間を味方にした方が勝つ
それは「時間を味方につける」ことだ。
これは僕に帝王学を教えてくれた恩師の言葉で、時間が自分に味方していればどんな交渉ごとでも勝てるという意味だ。つまり11月下旬に「絶対に買う」と営業マンに宣言した時点で、営業マンは残り1ヶ月で登録まで持って行かなければならない。12月までに登録しなければならないという期限を設定された営業マンは時間が来れば必ず価格を下げてくる。
すでに半分ゲームに勝ったようなものだが、ここからチキンレースが始まる。インタラクティブなコミュニケーションで創り上げる最高に楽しいゲームだ。絶対に焦ってはいけない。優秀な営業マンは耳触りの良い言葉を囁いてくる。
営業マンの顔、声、仕草の変化を見ながらゲームを楽しもう。
ゲームのルール
そしてゲームをより一層楽しむために以下の3つのルールを覚えていくと良い。楽園までたどり着くには社長決裁まで勝ち抜く必要がある。
- 営業マンが当日回答できる満額の値引きの場合まだ下がる(営業マン裁量枠)
- 上司に確認してOKをもらいましたという場合でもまだ下がる(上司の裁量枠)
- 本当にギリギリの場合は社内決裁が必要であるため最終回答は後日メールでの回答になる(社長決裁)
それでは僕の実録をご覧いただきたい。
決算1ヶ月前に一人でアポなし訪問
11月下旬にディーラーへアポなしで訪問。服装はしっかりと磨いたブラックコードバンのオールデン、ボリオリのジャケット。ここで注意すべきは必ず一人で訪問することだ。家族と一緒にいってはならない。後々家族は反対勢力として登場してもらうことになるため、ここでカードを切ってはならないのだ。
ディーラーに着くなり「予約はしていない。必ず買う、時間がないから一番優秀な営業マンを今すぐつけて欲しい」とシンプルに用件だけ伝える。
少し待つとビシッとした身なりの男性が飛んでくる。ひとこと言葉を発した瞬間に一番優秀な営業マンだとわかる。
金額が折り合えば必ず買うと宣言
そして「12月でBMW Japanは決算だと思う。12月登録に協力できる。希望の車種をできる限り安く買いたい。金額が折り合えば必ず買う」とシンプルに条件を伝えよう。そしてその後、希望の車種を3種類ほど伝える。
優秀な営業マンであれば3種類の車種から1種類に絞らせる。それは彼の頭に入っている特選車である可能性が高い。
BMWグランツーリスモ
僕はBMWグランツリーリスモを選んだ。クーペのようなスタイリッシュなデザインに加え、BMWが誇る”駆け抜ける喜び”、つまり地面を吸い付くような走りはそのままにロングホイールベースで高速安定までをも手に入れた。
そして車体の大きさは5シリーズを上回る迫力だ。ステーションワゴンタイプのBMWツーリングよりも車載量が大きく、ゴルフバッグも4人分入る。車高が通常のセダン、ステーションワゴンよりも高くなっており視界も抜群だ。
デザインだけでなく走りも最高というまるでオールデンのような車がBMWグランツーリスモなのだ。僕が3種類伝えたBMWの車種の中でも一番希望がこれだ。
初日は120万円引き
「お客様が必ず買うといってくださったので最大限の値引きを一気にします。本日ご決断いただければ120万引きします。他のお客様の手前もあるため本日限りの価格とさせてください」
一発で120万円引きだ。優秀な営業マン+特選車であることがわかる。
「特選車ですか?」「そうです、いくつかオプションもついています」とのやりとり。
特選車の中から一番良いカラーやオプションの組み合わせを選ぶために、特選車のリストを見せてもらう。そこから僕は外装はブラックサファイヤメタリック、内装はブラックダコタレザーの「ブラックxブラック」を選んだ。最高にスタイリッシュでオールデンのブラックコードバンにも負けない輝きを持つ。
決して初日はサインしてはならない
希望の車種に加えカラーも一番人気のブラック。そして120万円引き。ここでサインしても良いくらいだ。
しかし営業マンが当日回答できる満額の値引きの場合はまだ下がる。
焦らずにその日は検討するとだけ答えて帰ろう。決してサインしてはならない。
2回目の訪問で家族の反対勢力を出す
そして1週間後に2回目の訪問。ここが実質の勝負所になる。家族の反対勢力を出そう。
「先日はありがとうございます。妻に相談したところ予算オーバーでNGでした」と伝える。
そして僕は指値で150万円引きを求めた。営業マンの顔色が一瞬曇る。
「前回最大限の値引きを出しているので申し訳ないが難しい」と営業マンからの一次回答。
「それでは家族が納得しない。12月登録は難しい」と切り返す。時間を味方につけた瞬間だ。
彼は上司に電話で確認するといっておもむろに電話を始める。そしてしばらく席をはずす。
15分程度経ち戻ってくる。
145万円引き、赤字販売の領域へ
「それでは145万円引きではいかがでしょうか。私の他のお客様の利益を持ってきて積んでいる数字です。単体では赤字です。限界です」
実際にほとんど限界値であろう。単体では損益分岐点を下回っている赤字の数字には間違いない。しかし冒頭で述べた通り、単体で赤字でもインセンティブも含めトータルで黒字になればビジネスとしては成り立つ。しかもいくら優秀な営業マンだとしても当日に回答できる程の値引き額では納得したくない。彼には数日かけて社長決裁まで取って欲しいのだ。そこまで含めて優秀な営業マン、いや優秀なビジネスマンであろうと。
ここからが本当の勝負
もはや金額の問題ではない。これはゲームなのだ。僕はビジネスマンの端くれとして、組織をリードしステークホルダを動かすための練習をしているのだ。
ルールを把握し、作戦を立て、それを実行する。
こんなに面白いゲームがあるだろうか。
営業マンが社内で説明する材料を渡す
ゲームの終盤で重要なのは営業マンが社内で説明する材料を渡すことだ。この段階では営業マンと僕はBMWという巨大組織へ立ち向かい、一緒に戦う友へと変わる。
僕が彼に社内説明用として渡した材料はオプションだ。
今のBMWはナビやオーディオ、セキュリティパッケージなど必要なものはほとんど標準装備されている。特にラグジュアリーモデルはこれ以上つけるオプションがないくらいだ。
そこで僕はあえて本国でしかつけられない、ヘッドアップディスプレイとレーンチェンジウォーニングをつけて欲しいと言った。
特選車にドイツ本国オプションがつけられないのは前述の通りだが、これは前振りだ。
16万円分のドイツ本国オプション
ヘッドアップディスプレイとレーンチェンジウォーニングで合計16万円分。
値引き目標の150万円を達成するために彼に材料を渡したのだ。
「お客様が本国オプションを求められていて、その分を値引きで回答させて欲しい」
こう社内で説明すれば良いのだ。それっぽい資料を作りインセンティブも合わせればビジネスとして成り立つ旨を上司に説明し社長決裁を取ってくればいい。僕からの優しいサポートだ。もはや彼は交渉相手ではなく、一緒にBMW社内を説得し、ゴールに向かって共に進むパートナーへと変化していた。
僕の示唆をしっかりと汲み取り「検討します。社内で調整が必要のため後日メールで結果をお伝えします」と。
ついに161万円引きへ
メールで連絡が来たのは3日後だった。
「本国オプションはやはり付けられないのですが、オプションの金額16万円分引かせていただきます。社内で決裁をとりました」
彼は日本一の営業マンだ。いや、日本一のビジネスマンだと思う。目標だった150万円を遥かに超える161万円引きを社内で勝ち取ってきた。戦友は僕が渡した本国オプション16万円の材料を100%使い切っての着地を果たしたのだ。
クリスマス
最初の訪問から1ヶ月後のクリスマスに僕のBMWは登録を果たした。ディーラーに行ったのはたったの2回。ゲームのルールを知り、作戦を立て、それを実行しただけだ。
仕事でも恋愛でもゲームでも必ず相手の立場を考え、尊重し、優しくサポートする。そして共に人生を勝ち抜く。人間は一人では生きていけない。
インタラクティブなコミュニケーションは何よりも楽しく、生きている実感、温もりを感じるのだ。
BMWの駆け抜ける歓び
BMWは素晴らしい。美しいシルエットもさることながら、走っていて本当に楽しい。地面に吸い付くような走り、森やビルを駆け抜ける加速感、まるで身体と一体化したかのような官能的なレスポンス。
BMWが駆け抜ける歓びという「走り」にこだわっていることが極めてよくわかる。
美しく、僕をどこまでも連れて行ってくれる、僕の愛するBMW。
これからも僕とBMWの物語は続いていくのである。
2017.4.29 Alden Style