2010年 夏、伝説のオールデン カラー4との出会い
ラコタハウス10周年記念オールデン カラー4 コードバンモデルとの出会い
時は遡り、今から5年以上前の南青山、記録的猛暑だった2010年夏
東京のこの日の気温は35度、湿度は高く、風もないことから体感温度は40度近くに達していた。
そう、オールデンを愛する者たちにとって、この日は運命の日だった。
2010年7月25日(日)正午、ラコタハウス10周年記念モデルの発売日時だ。
発売モデルは超激レアカラーコードバン。LAKOTA HOUSE ALDEN 10th Anniversary Model Cordovan #4
幻の #4 Shell Cordovan、人呼んでカラー4。
歴史上初めて人の手に渡ることになるカラー4コードバンに誰もが期待していた。
ラコタハウスが厳選した3種類のオールデン カラー4
日本にオールデンの巨大マーケットを築き上げたラコタハウスの功績、そして強烈な力があったからこそ実現したカラー4コードバンの歴史的なデビュー。
透明感のある高貴な紅色をその身体に纏うオールデン カラー4。ラコタハウスは3種類のモデルを選んだ。全てのモデルにハンドステッチが入ったオールデンの中でも最高峰のものだけが厳選された。
ラコタハウス10周年記念モデル、厳選された3種類のオールデンカラー4
- オールデンカラー4タンカーブーツ
- オールデンカラー4NST(Uチップ、ノルウェイジャンフロント)
- オールデンカラー4コインローファー
出典:http://thelakotahouse.com/updates/index.php?ID=2315
目にも美しい、3種の素晴らしいオールデンカラー4。
歴史上初めて登場するこのモデルに全国から多数の人が南青山に集まった。
かくいう私もその一人である。
気温35度の東京、幻のオールデンカラー4を求めて
見慣れた表参道の駅、B1出口を抜け青山通りを渋谷方面へ。
骨董通りに入りしばらく歩を進める。
それにしても暑い。昨日まで一週間連続35度以上の猛暑日が続いている。
時計を見ると10時35分を指している。
この日のラコタハウス開店は12時からだ。まだ1時間半前。充分に時間はある。
狙いはただ一つ、カラー4 オールデンNST モディファイドラスト。
オールデンNSTのモディファイドラストだけでも極めて貴重な上、幻のカラー4コードバン。
喉から手が出るほど欲しい。
これまでの歴史、そして洋の東西を問わずこれを逃すと二度と手に入らない。
出典:http://thelakotahouse.com/updates/index.php?ID=2315
運命の26番
骨董通りをしばらく歩き、ハンティングワールドを右に折れ、すこし進んで左に曲がるとラコタハウスの通りに入る。
当然行列必至と思っていたが店の前にはほとんど誰もいない。まさかの拍子抜け、ちょっと早すぎたかと思いつつ、ラコタハウスの前へ。
するとラコタハウスの店員さんは「整理券をお配りしています」とのコメント。
道理で誰もいないはずだ。
運命の整理券番号は26番。
「ご案内は1時半頃になるかと思います。その頃また来てください」とのこと。
農耕馬1頭から作ることの出来るコードバンシューズは12足。すなわち今回は最大でも「12足×3種類=36足の入荷」と考えられることから、26番目はかなり微妙な位置。
激戦区のサイズ8D、欲しいモデルで自分のサイズが残っている可能性は極めて低い。
店員さんによると「朝5時から並んでいる方や鳥取から来られた方もいますよ」とのこと。
オールデンの圧倒的な人気
オールデンの人気を完全になめていた。
正直靴好きの中でもオールデンファンはちょっと変わっている、と私は思う。見た目だけでいったらジョンロブの方が美しいし、エドワードグリーンの方がスーツに映える。
オールデンは英国靴に比べて作りも雑なところがあるし、コードバンは水にも弱い、スーツへの合わせ方もちょっと工夫が必要だし、正直、万人受けする靴ではない。
それを超越する愛くるしさを持つオールデンが人気が高いのは当然わかっていたつもりだったが、認識が少し甘かった。
まさか鳥取県から夜な夜な車を飛ばして来られている方がいるとは。
骨董通りのスターバックスで落ち着かない時を過ごす
気を取り直して骨董通りのスターバックスで1時半まで時間をつぶす。
ベンティーサイズのアイスラテを飲みながら、オールデン カラー4 NSTが残っていることを祈る。
アイスラテを飲み干し、時計を見るとまだ11時15分だ。
この間にも次々にオールデンカラー4が売れていくのを思うと気がはやる。
カラー4コードバンの入った手提げを持った先駆者が既に現れる
いてもたってもいられず、ラコタハウスの前の通りに行ってみる。
するときれいに磨いたオールデン125周年記念のダークブラウンコードバンのVチップを履いたお洒落なお兄さんが、既にその戦利品であるカラー4コードバンの入ったラコタハウスの紙袋を手から下げて談笑している。
羨ましい、羨ましすぎるぜ!お兄さん!!
俺のオールデンNSTカラー4を取っておいてくれ!
もっと早起きすればよかったと自分を恨みつつ、骨董通りを当てもなく歩く。しかしこの日の気温は35度。
これではラコタハウスからカラー4オールデンが枯渇する前に自分の身体から水分が枯れてしまう。
すぐさまもう一度スタバへ避難。
10万円の靴を買いに行くというのに、足下は無印のビーチサンダル。
ウイスキーコードバンのオールデンを履いていこうとちょっと迷ったが無理もない、この日は8日目の蝉ならぬ、8日目の連続猛暑日なのだ。こんな日にコードバンを履いていくなんて馬鹿げている。無印のビーサンで充分だ。
自分の汗でウイスキーコードバンがシミだらけになったら目も当てられない。
刻一刻と迫るオールデンカラー4の完売時間
そして、待ちきれず1時過ぎにラコタハウスへ。
整理券を見せると「ちょっと時間が押してて、26番の方だと2時~3時くらいになりそうです」とのこと。
三度スタバに戻るのも嫌なので、ラコタハウスの前の道路の日陰に座って待つことに。
近くには整理券20番後半〜30番台の方もその日陰で自分の時が来るのを固唾をのんで待っている。
隣には整理券31番の栃木から来たという若者が。
どちらからともなく「どのモデルを狙っているんですか」という話に。
彼はカラー4のタンカーブーツを狙っているとのこと。
出典:http://thelakotahouse.com/updates/index.php?ID=2315
そして私はオールデンNST一本勝負だ、これ以外ない。
オールデンカラー4、ローファー売り切れ
30分ほど経った頃だろうか。
「オールデンカラー4、ローファーは売り切れました!」との店員さんからの声。
その瞬間、何名かの人がため息とともに諦めて帰宅。
出典:http://thelakotahouse.com/updates/index.php?ID=2315
僕はNSTが残っていることを信じ、あきらめずに猛暑の中を待つ。それにしても暑い、気が狂いそうだ。
するとラコタハウスの店員さんが「こんな暑い中、ありがとうございます!」と、アイススプレーを首元にかけてくれる。これがまた気持ちいい!さすが接客の丁寧さでは右に出るもののいないラコタハウス青山店!
「NSTの8Dはまだありますか?」と聴くと、「あと、1足残っています」とのこと。
お願い神様!!なんとか残しておいてください!
運命の2時、オールデンカラー4 NST 8D完売
そして2時過ぎ、ついにこの瞬間が訪れる。
「NSTの8D、今売り切れてしまいました。申し訳ありません」
Alden Color 4 NST Modified last
出典:http://thelakotahouse.com/updates/index.php?ID=2315
あー。そうですか・・・。売り切れですか・・・・・。
約4時間近く猛暑の南青山を期待と不安が入り交じる中待ち続けたが無念の敗退。
じゃあ、もう帰る。暑すぎる。カラー4を抱えながら倒れるならまだしも、買えずに倒れたらアホだ!
せめて実物を一目見て帰ろうと思い「店員さん、もう帰るけど、せっかく待ったんだから実物ちょっと見せてよ」と言って少しだけ店の中に。
すると美しいカラー4コードバンが並んでいて、3人ずつ試着をしている。なんと美しい!素晴らしい!!欲しい!!!
店員さんから「あと15分くらいだからお待ちになりますか?タンカーは8Dが残ってますよ。本当はタンカーブーツが目玉で一番最初に売り切れるかと思いましたが、この暑さでローファーの売れ行きが一番良かったです」との言葉。
せっかくなのでもう少し我慢して待つことに。
オールデンカラー4 タンカーブーツを試着
そして、店員さんの言葉通り、15分後に入店。
店内に入ると3カ所で試着が出来る状態で真ん中に通された。
「この時間にタンカーの8Dが残っているとは思いませんでした」と接客を担当してくれた店員さん。なんとその隣には血脇社長が自らしゃがみ込んで接客中。お客さんの試着の手伝いをしている!
すごい光景を目にしながらオールデンカラー4のタンカーブーツに足を通す。
ミリタリーラストとクレープソールに包まれた足は快適そのもの。当然即買いの判断をすべきところだが、オールデンカラー4NSTが欲しすぎたあまりに、なぜかタンカーブーツが欲しいと思えない。しかも猛暑の中、約4時間待ち身体中汗だく、足下は無印のビーサン。真夏の暑さに沸騰した脳みそでは、どうしてもタンカーブーツを履いている自分が想像できない。
ラコタハウスの丁寧な接客を受けながら俺はこう思った。
- 俺は本当にこのブーツを履くことがあるのか?
- コレクションのためだけに履かないブーツを飾っておくのか?
- 俺のすぐ後ろには栃木から来たタンカーブーツが欲しくてたまらない若者がいた、そいつに譲ってやるべきではないか?
暑さで思考停止に陥っていた俺は、思わずこう言っていた。
「今回はやめておきます」
お店中の人が俺を見た。
店員さんのひとりが「本当にいいんですか?」と尋ねたくらいだ。
オールデンカラー4を買えなかったのではなく、買わなかった。そういう判断をした。
そう、オールデンカラー4を手に入れるチャンスはあった。
しかも今考えればオールデン史上一番人気に間違いないオールデンカラー4タンカーブーツ。
それを買わなかった。買えなかったのではない、買わなかった。そういう判断を俺はしたのだ。
だからこそ、その夜、激しく後悔をした。なぜ買わなかったんだ、俺!どうして買わなかったんだ!俺!!
今、過去に戻れるなら俺に言いたい。いいから買え!とにかく買え!!頼む買ってくれ!!!と。
その日からオールデンカラー4探しの旅が始まった
後悔の化け物のような状態になった俺は、その日以降、世界中のオールデンの販売店にメールでオールデンカラー4の入荷予定はないか、MTOは出来ないのか?と訊きまくった。
その答えは異口同音に切ないものだった。
「We don't have that」
「Not available」
「I'm sorry, but we don't have any color 4 cordovan」
やはり、あの時に買わなかった俺が悪い。
一生この後悔を胸に刻んで生きていくんだと誓ったあの日。ラコタハウスには二度と行かないと八つ当たりのように誓ったあの日。
そんな中、ある一通のメールが。
「ここだけの話ですが、カラー4コードバンの入荷予定があります。通常は事前予約出来ませんが特別に予約を受けます」
ついに来た!奇跡が起きた!!
後編に続く!【僕の愛するAlden】伝説のオールデン カラー4!(後編)